ホームセンターやペットショップ、動物病院、通販サイトなど、今やどこでも多種多様なドッグフードが手に入ります。とくに総合栄養食と表示されたフードは栄養バランスとカロリーが計算され、主食として与えていれば基本的に問題ないといわれます。
しかし、大量生産・長期流通を前提とした市販フードの中には、添加物が多かったり原材料の質に不安が残るものも存在します。近年では、既製フードが合わずアレルギー症状(皮膚のかゆみ・涙やけ・軟便など)を示すワンちゃんも増加傾向。そこで注目されているのが、手作りドッグフードです。本記事では、安全性と栄養の両立をめざす飼い主さんのために、手作りごはんと市販フードの最適な併用法をわかりやすく解説します。
目次
手作りドッグフードが選ばれる理由
- 安全性の可視化:使う食材・調理過程が明確で安心。
- 体質に合わせた設計:原因食材を除去しやすく、食物アレルギー対策に有効。
- 嗜好性アップ:香りと鮮度で食欲を刺激。シニアや病後の回復期にも。
- 観察機会の増加:便・被毛・体調の変化を日々チェックしやすい。
- 絆が深まる:“食”を通じて愛犬とのコミュニケーションが増える。
“完全手作り”を勧めない理由
SNSなどで完全手作りを見かけても、すべての食事を手作りにするのは推奨しません。犬は人と必要栄養が異なり、手作りのみだとカルシウム・亜鉛・ビタミンB群などが不足しがち。脂質や塩分の過剰で内臓に負担をかけることもあります。結果として、骨格形成不全、貧血、肝腎負担、毛艶低下などのリスクに繋がる可能性があります。
理想は、市販の総合栄養食をベースにしながら、安全性と嗜好性を手作りで補う“併用”スタイルです。
おすすめ比率:市販7〜8 割 × 手作り2〜3 割
栄養の安定と手作りのメリットを両立するための目安は以下です。
- 1日1食だけ手作り(朝:市販、夜:手作り など)
- 総量の2〜3割を手作り(70〜80%:市販/20〜30%:手作り)
この比率なら、栄養の偏りを最小化しつつ、添加物の摂取量低減や嗜好性向上が期待できます。
手作りの基本構成(たんぱく質・野菜・炭水化物)
目安の配合と具体例は次の通りです(加熱調理が原則。味付け・香辛料は不要)。
| カテゴリ | 割合の目安 | 例 |
|---|---|---|
| 動物性たんぱく質 | 約40〜50% | 鶏むね肉・ささみ・白身魚・卵 など |
| 野菜類 | 約30% | にんじん・かぼちゃ・ブロッコリー・キャベツ など |
| 炭水化物 | 約20% | 白米・さつまいも・じゃがいも・オートミール など |
犬は香りで“おいしさ”を判断する傾向が強いため、油や塩分に頼らなくても十分に満足してくれることが多いです。
犬に絶対NGの食材一覧
少量でも与えてはいけない食材が存在します。必ず把握しておきましょう。
| 食材 | 理由 |
|---|---|
| ネギ類(玉ねぎ・長ねぎ・にんにく 等) | 赤血球を壊す成分により溶血性貧血の恐れ |
| チョコレート・ココア | テオブロミン中毒(嘔吐・けいれん・不整脈) |
| ブドウ・レーズン | 腎不全のリスクが指摘 |
| 香辛料(唐辛子・こしょう 等) | 消化器への刺激・炎症 |
| 塩分の多い加工食品 | 腎臓・心臓への負担増 |
人間用の調味料・加工食品は基本NG。風味付けが必要なら犬用だしや犬用調味パウダーなどを活用しましょう。
安全性を高める調理・保存のコツ
- 中心まで加熱:鶏肉・魚介は生食を避け、十分に加熱。
- 刻む・煮る:細かく刻む/柔らかく煮て消化吸収を助ける。
- 適温で提供:熱すぎると口内・食道を傷める恐れ。粗熱をとってから。
- 冷凍小分け:作り置きは1食分ずつ冷凍し、必要量だけ解凍。
- 日々の観察:便の形・回数・におい、被毛・皮膚、元気度をチェック。合わない食材は中止。
無理なく続ける工夫とサプリ活用
まずは週2〜3回、あるいは1日1食だけなど、負担にならない頻度から始めましょう。継続性が最重要です。栄養の偏りが心配なら、獣医師推奨の犬用サプリ(カルシウム・亜鉛・ビタミンB群、ヤギミルク、酵素パウダー等)で補完する方法もあります。
結論:手作り × 市販の“いいとこ取り”が最適解
- 市販フード:総合栄養食としての栄養安定性・保管の容易さ。
- 手作り:鮮度・香り・個体差への適応(アレルギー除去・嗜好性向上)。
両者を併用することで、安全性・嗜好性・栄養バランスの三拍子を実現できます。
まとめ—今日から少しずつ“手作りの愛情”を
- 市販フードだけで不安があるなら、手作りを20〜30%取り入れてみる。
- 配合はたんぱく質40〜50%・野菜30%・炭水化物20%を目安に。
- ネギ類・チョコ・ブドウ・香辛料・高塩分は厳禁。
- 十分な加熱・刻む/煮る・適温提供・冷凍小分けで安全性を確保。
- 完璧を目指さず続けられる頻度で。必要に応じて犬用サプリを活用。
手作りドッグフードは、流行ではなく愛犬と向き合う選択。今日からできる範囲で“手作りの愛情”を一皿に添え、健康で幸せな毎日を一緒に育てていきましょう。
※本記事は一般的なガイドです。個体差・疾患・ライフステージにより最適な食事は異なります。持続する不調や食事変更に伴う症状がある場合は、必ず獣医師にご相談ください。